健康経営とプレゼンティーイズム:健康経営に欠かせない基礎知識を福岡の鍼灸師が紹介!

健康経営を実践する企業が増える中、従業員の健康状態と企業の業績との関係に注目が集まっています。

健康経営の推進において放っておくことはできない「プレゼンティーイズム」は、見えにくい生産性損失をもたらし、今や企業の利益や従業員の健康に影響を与える深刻な問題です。

今回の記事では、福岡みらいテラス鍼灸の鍼灸師が、経営者様や健康経営担当者様が知っておくべきプレゼンティーイズムの基礎知識をご紹介します。


プレゼンティーイズムとは

プレゼンティーイズムの定義

プレゼンティーイズム(presenteeism)は〝疾病出勤〟という意味の英単語であり、日本では経済産業省の『企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1班)』で以下のように定義されています。

“プレゼンティーイズムは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力 や生産性が低下している状態を示す”

つまり、欠勤には至っていないが、心身に何らかの不調を抱えながら仕事をしているため、十分なパフォーマンスが発揮できず生産性が低下してしまう状態です。

出典:経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課『企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)』

プレゼンティーイズムを招く原因

プレゼンティーイズムを引き起こす原因の例として以下が挙げられます。

・メンタル面の不調(不眠、睡眠不足、鬱)
・胃腸痛、呼吸器の不調
・頭痛、腰痛、肩こり、目のかすみ
・アレルギー(花粉症など)
・風邪
・月経、月経前症候群(PMS)
・二日酔い

など

また、プレゼンティーイズムに影響される業務パフォーマンス低下の例としては、

「思考力が低下する」
「反応が鈍くなる」
「注意力が衰え、散漫になる」
「動作が緩慢になる」

などがあります。

このような状態で業務を行うと、業務効率や生産性の低下のほか、職場雰囲気の悪化、エラーやミスの増加によるトラブルを招く可能性があります。


アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムの違い

プレゼンティーイズムのほかに、アブセンティーイズムという言葉があります。
アブセンティーイズム(absenteeism)とは、心身の不調により病欠、病気休業など業務自体が行えない状態のことを指します。

「プレゼンティーイズム」「アブセンティーイズム」ともに、WHO(世界保健機関)によって提唱された、健康問題に起因したパフォーマンスの損失を表す指標です。

アブセンティーイズムはプレゼンティーイズムとは異なり、欠員が出ている状態が可視化され、企業の様々な損失につながります。

一方プレゼンティーイズムは、何らかの心身の不調によるパフォーマンス低下ですが、企業にとって「可視化されづらい損失」ともいわれています。

しかし、不調を抱えたままの状態で勤務を続けていくと、さらに状態が悪化し従業員の健康状態を損なう可能性もありますので、早期の改善が望まれます。

違いの比較

アブセンティーイズムプレゼンティーイズム
状態欠勤している出勤しているが不調
見えやすさ明確に可視化できる見えにくく気づきにくい
影響業務の一部が停止業務全体の質が低下
損失規模比較的限定的大きくなりやすい

プレゼンティーイズムが企業に与える損失額と影響

プレゼンティーイズムを抱えたままにしておくと、企業全体に影響を及ぼす事が示唆されています。

出典:データヘルス・健康経営を推進するための『コラボヘルスガイドライン』|厚生労働省保険局

上の図は厚生労働省が発表した資料で、生産性の測定方法が共通する3企業の、健康関連総コストを推計した結果を示したものです。

健康関連総コストのうち、プレゼンティーイズムによるものが77.9%と8割近くを占めており、医療費よりもはるかに上回っていることがわかります。

また1人当たりのプレゼンティーイズムによる損失額は、年間で約60万円近くになるとの試算もでています。

このように企業の健康関連総コストにおいて、プレゼンティーイズムが最大の要因であるといえます。

全国の労働者27,507名を対象とした横浜市立大学大学院と産業医科大学の共同研究によると、アブセンティーズムによる年間損失額は約0.3兆円、プレゼンティーイズムによる年間損失額はなんと約7.3兆円になるとの報告があります。

これら合計7.6兆円の損失額は日本のGDPの1.1%に相当し、企業や自治体が進める働く人への健康支援や今後の研究の発展にも大きく示唆を与える、とされています。

出典:【横浜市立大学】メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に|北海道新聞


このことから、プレゼンティーイズムの対策を取らず仮に従業員が離職した場合、人材の損失、他の従業員の業務増加、さらには新たな採用・人材育成へのコストが発生するという大きな影響が出ることも考えておく必要があります。


プレゼンティーイズムの測定方法

前述のようにプレゼンティーイズムは可視化されづらい損失ですが、経済産業省はプレゼンティーイズムの測定方法を5つ挙げています。

健康経営評価指標【生産性への影響度を評価する指標:プレゼンティーイズム】

評価手法特徴
WHO-HPQWHOで世界的に使用されている「WHO健康と労働パフォーマンスに関する質問紙」。3つの設問で評価し、絶対的・相対的プレゼンティーイズムを算出する。
SPQ東大1項目版東京大学が開発した1項目でプレゼンティーイズムを測定するアンケート。回答者属性の違いによる影響を受けにくい特徴がある。
WLQタフツ大学医学部で作成された日本語版。25の質問項目からなり、時間管理や集中力など4つの尺度(時間管理、身体活動、集中力・対人関係、仕事の結果)で構成されている。
WFun産業医科大学で開発された労働機能障害の程度を測るスケール。7つの設問で点数化し、労働機能の障害を評価する。
QQmethod健康問題の有無を確認し、仕事への影響度を4つの質問で評価。健康問題が業務に与える影響を測定する。

参考:企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~ (改訂第1版)|経済産業省

上の表は、経済産企業省による『企業の「健康経営」ガイドブック』で挙げられている評価手法の特徴を要約したものです。

いずれも従業員などへのアンケートによって調査されます。

これらはいずれもプレゼンティーイズムを測定し、科学的に妥当性や信頼性が検証されている代表的なものです。

ですが、測定結果の示す意味が異なるため、異なる指標を並べて比較することはできません。

自社の状態を評価する際には、どの測定方法を用いたか、合わせて公表しておくとよいでしょう。

福岡みらいテラス鍼灸では、鍼・ストレッチ施術ケアとともに、プレゼンティーイズム・アブセンティーズムの可視化を行い企業様の健康経営施策の指標として提供しています。


プレゼンティーイズムの解消法

従業員の健康リスクや企業の利益に大きく損失を与えるプレゼンティーイズムとアブセンティーイズムは、さまざまな因子が影響してくるため、解消に向けては総合的な視点で対策をとる必要があります。

健康経営オフィスの考え方

健康オフィスとは「健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場」のことをいいます。

2015年(平成27年)に経済産業省の「健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業」では、オフィス環境を整備し、従業員の健康を保持・増進する下記7つの行動を誘発させることが、結果的にプレゼンティーイズム、アブセンティーイズムの解消に結び付くということが明らかとされています。

出典:『健康経営オフィスレポート』|経済産業省

・快適性を感じる
・コミュニケーションする
・休憩・気分転換をする
・体を動かす
・適切な食行動をとる
・清潔にする
・健康意識を高める

経済産業省では、オフィス環境において従業員の健康を保持・増進する上記7つの行動を、オフィス内で日常的に誘発させることが重要としています。

健康経営オフィスの効果モデル

従業員の健康保持・増進につながる7つの行動による効果は、以下が考えられています。

●運動器・感覚器障害の予防・改善
●メンタルヘルス不調の予防・改善
●心身症(ストレス性内科疾患)の予防・改善
●生活習慣病の予防・改善
●感染症/アレルギーの予防・改善

さらに20,000名以上(所属企業200社以上)のビジネスパーソンの働き方と健康問題に関する調査を実施した「健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業」では、オフィス環境を整備し、健康の保持・増進につながる7つの行動を誘発することは、健康状態に影響し、最終的にはプレゼンティーイズム・アブセンティーズムの解消に結び付くという結果がでています。

出典:『健康経営オフィスレポート』|経済産業省


まとめ

プレゼンティーイズムは目に見えにくく、“静かな損失”かもしれません。
しかし、放置すれば企業全体の生産性や従業員満足度に大きな影響を与えます。

それを正しく理解し、健康経営の視点から取り組むことで、企業全体の生産性向上や人材定着、職場の活性化につなげることが期待できます。

健康経営の推進は、見えないリスクに目を向け、見えない損失を防ぐ役割も担っています。

従業員の健康、企業の安定的な成長のために、プレゼンティーイズム、アブセンティーズムの予防・改善に健康経営を実践していきましょう。


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