鍼灸(しんきゅう)施術について:福岡の鍼灸師が詳しく解説!

現代社会において、ストレスや身体の不調は誰にでも起こりうる問題ですよね。
そんな中、古くから伝わる鍼灸施術がテレビで紹介されるなど、再び注目を集めています。

とは言っても、鍼灸と聞いてもやっぱりよくわからない、何をされるのか不安だ、という方が多いのではないでしょうか。

今回は、そのような皆様のために〝鍼灸(しんきゅう)施術〟は何をするのか、その効果と仕組みについて福岡みらいテラス鍼灸の鍼灸師が、わかりやすく解説していきます。

鍼灸って何?

鍼灸は東洋医学の手法の1つで、細い鍼(はり)で身体を刺激したり、温かいお灸(きゅう)を使ったりして身体の不調を改善させる方法です。

鍼(はり)について

日本の鍼は直径0.14〜0.18mm程度の極めて細い、ステンレス製の鍼を使うのが主流です。

福岡みらいテラス鍼灸が使用する鍼の太さは直径0.16mm。注射針の太さが約0.4mm〜1.6mmといわれているので、注射針のそれと比べるとずっと細い太さです。

鍼を専用の細い筒に入れて身体のツボにあて、筒から出ている鍼の柄を少しずつ優しく叩くことで皮膚に刺入していく「管鍼法(かんしんほう)」というやり方が特徴的です。的確にツボに当てつつ、鍼の痛みを小さくできる日本独自の方法です。

(鍼は髪の毛程の太さ)
(管鍼法)

鍼施術の手法は他にもあり、福岡みらいテラス鍼灸が提供している鍼施術は、皮膚に刺すのではなく、鍼先を皮膚表面でタップする(弾く)といった「散鍼法(さんしんほう)」という方法を採用しています。

「管鍼法」も「散鍼法」も、鍼の痛みは一瞬チクっとする程度。むしろ痛みを感じないことも多いですよ。

他にも子ども向けの「小児はり」や先の尖っていない「鍉鍼(ていしん)」など、専用の〝刺さない鍼〟で、あてたりさすったりするなどの方法もあります。

このように鍼施術だけでも様々なやり方があり、症状や用途によって使いわけているんです。

鍼施術の概要やよくある質問については、こちらでも詳しく紹介しています。
福岡みらいテラス鍼灸|鍼治療について

お灸(きゅう)について

お灸の原料はヨモギの葉で、これを乾燥させ精製したものを「モグサ」といいます。モグサを米粒かその半分程の大きさにして、身体のツボに乗せて温熱刺激を与える施術方法です。

お灸って「熱い」「跡が残る」イメージがありませんか?

昔はそうでしたが、現在では皮膚に専用のシールを貼ったり台座を付けたりして、その上でお灸を施すので、むしろ心地の良いジワ~っとする温かさのお灸が主流です。

お灸にも様々な方法があり、症状によって使い分けます。また、身体の状態に応じて熱さの程度を確認しながら、一人ひとりの温感に合わせて施しています。

(米粒大のお灸)
(台座灸)

※オフィス訪問での施術では火を扱うため基本的にお灸は行っておりません。鍼とストレッチ施術が基本サービスとなります。

お灸の概要やよくある質問については、こちらでも詳しく紹介しています。
福岡みらいテラス鍼灸|お灸について

鍼灸にはどんな効果があるの?

鍼灸施術はどのような効果があるのか、皆様その辺りがとても興味があるのではないでしょうか。

大枠には、抗ストレス作用・自律神経調節作用・鎮痛作用などの効果があり、世界的にもWHO(世界保健機関)・NIH(米国国立研究所)・BMA(英国医師会)でその効果が認められています。

その中で、WHO(世界保健機関)で鍼灸が有効であると主張された疾患群がリスト化されているのでご紹介します。

1979年 鍼灸に関するWHO地域間セミナー(北京)における暫定リスト

神経系疾患神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
運動器系疾患関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頸椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折・打撲・むちうち・捻挫)
循環器系疾患心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
呼吸器系疾患気管支炎・喘息・風邪および予防
消化器系疾患胃腸病(胃炎・消化不良・胃下垂・胃酸過多・下痢・便秘)・胆のう炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
代謝内分泌系疾患バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
生殖・泌尿器系疾患膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大
婦人科系疾患更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
耳鼻咽喉科系疾患中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・扁桃炎
眼科系疾患眼精疲労・仮性近視・結膜炎・かすみ目・ものもらい
小児科系疾患小児神経症(夜泣き・かんむし・夜尿症・消化不良・偏食・食欲不振・不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・虚弱体質の改善

鍼灸施術の効果、、たくさんありますね!

ただこれは、完治するものもあれば、完全には治らないが緩和されるものも含まれています。また完治しても再発する場合があるので、これらの疾患群に対する鍼灸施術は、必ずしも「完治する」ではなく「一定の効果を上げ得る」という捉え方をしておくと良いでしょう。

東洋医学は本来身体が持っている自然治癒力を後押しして、健康な身体の状態に整えるという考え方です。

鍼灸施術も同じで、症状が出てから受けても一定の効果が期待できますし、症状が出ないように予防する目的で受けていただくことでも効果を発揮します。さらに、東洋医学ならびに鍼灸には「未病」という言葉があります。

未病とは?

未病とは「発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態」を指します。

自覚症状はないが検査で異常が見られる西洋医学的未病と、自覚症状はあるが検査では異常がない東洋医学的未病という考え方があります。

「健康」と「病気」の間をさまよっている状態ですね。

病気ではないけれど健康ともいえない状態、つまり、「だるい」「疲れやすい」「冷えが気になる」などといった〝なんか調子が良くない〟という不調も未病といえます。
これ、、、心当たりある方も多いのではないでしょうか??

全国健康保険協会では〝「病気になってしまってからそれを治すよりも、病気になりにくい心身をつくることで病気を予防し、健康を維持する」という予防医学の重要性が認識されるにつれ、「未病」も重要なキーワードになってきています。〟と記されています。
出典:全国健康保険協会

また、2000年以上前の中国最古の医学書とされる「黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)」の中に〝聖人は未病を治す〟と書かれており、この頃から予防の重要性が既に認識されていたことがわかります。
参考:(一社)日本未病学会:未病とは?


ちなみに「黄帝内経素問」は鍼灸施術についても記されており、鍼灸師にとっては必須アイテムなんです。

〝聖人は未病を治す〟のように東洋医学、そして鍼灸施術には「未病治」という「病気になる前の身体情報をもとに病気予防や健康回復を行う」といった考え方が基本にあります。
そしてその考え方は近年ますます広まっているんです。

どうして鍼灸施術効果があるの?

なぜ鍼灸施術は効果があるのか、これも多くの方が知りたい情報だと思います。

〝鍼灸〟〝東洋医学〟と聞くと何だか不思議な、時にスピリチュアル的なイメージがありませんか?

そのイメージは否めないところもありますが、近年は世界各国の医療機関などで科学的な解明が進んでいます。
ここからは効果の仕組みを、順を追って簡単にわかりやすく説明していきます。

身体には「ツボ」がある

身体には「ツボ」、本名は「経穴(けいけつ)」と呼ばれるポイントがあり、身体の中を流れる〝気〟や〝エネルギー〟と関係しているといわれています。

例えばこっている所や痛みのある所を押さえると、痛かったり気持ちよかったりしませんか?
これは身体の不調を感じる〝気〟がツボから沁み出して、皮膚表面に現れている状態なんです。

ツボの数は出典によって異なりますが、361穴~365穴あるといわれています。
身体中に点在して、不調のシグナルを出す反応点の役割を担っているんです。

鍼やお灸を使ってツボを刺激する

鍼やお灸でツボに刺激を与えることで、その部分の血流が良くなったり、気(エネルギー)が正しく流れるようになります。

鍼は気の流れを促し、お灸は血の流れを促す。とされています。
これらが痛みを和らげたり、身体の調子を整える助けになります。

鍼灸施術は身体に外部刺激を加えることによって、自己治癒力に必要な血流や気(エネルギー)の流れを整えるという作用を後押しする役割を担っているんです。


鍼灸師の中には、症状の原因となる筋肉にアプローチする場合がありますが、そこにもやはりツボが存在します。

筋肉がいくつも重なっている部分や関節部など、人間の構造上、どうしてもこりや痛みなどの症状が出やすい箇所があり、そこには必ずツボがあるんですよ。

また、下図のように内臓の調子を示してくれるツボがあり、例えば腎臓に関係するツボだと「腎兪(じんゆ)」といったように各内臓の名前が付いたツボが存在します。

これらのように、身体のシグナルを反応で示しているツボを探り、的確に施術を行うことで効果を引き出しています。

脳や神経に働きかける

鍼灸施術の効果の仕組みについてツボというキーワードで説明してきましたが、やはり不思議な感じがするのは私だけでしょうか?笑

ここからは科学的に解明されている効果の仕組みについて説明していきます。


鍼やお灸によって刺激を受けると、身体を通っている神経が刺激され、神経はその刺激情報を脳に伝達します。

情報をキャッチした脳は、痛みを和らげる物質(鎮痛物質)を放出したり、必要なホルモン物質を放出したりするのです。

これはホメオスタシス(内部環境の恒常性)といい、身体を一定の状態に保つ現象です。つまり、身体が何らかの刺激に対して身を守る防衛反応を行なっている状態で、鍼灸施術はこの反応を利用しています。

ホメオスタシスの作用は、自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)が担っています。これらの不具合はさまざまな不調に関係することから、鍼灸はそれらにアプローチすることができ、効果をもたらすと解明されています。

鍼灸施術は安全なの?

鍼灸施術の効果や仕組みを述べてきましたが、安全面も気になるところですよね?
もちろん鍼灸施術をする際、安全面を第一に考えて行われていますので、そちらを説明していきます。

鍼施術における安全面の配慮

施術する際は「ディスポーザブル鍼」という、一本一本滅菌保存され使い捨ての鍼を使用します。また、器具・手指・施術部位を念入りに消毒するなど、感染や安全面に十分に注意して法律で定められた管理がなされています。

(滅菌保存されたディスポーザブル鍼)

鍼施術後まれに、軽い出血や青あざができることがありますが、これらは1~2週間ほどで自然に治ります。

お灸施術における安全面の配慮

お灸は温熱療法の一種で皮膚に熱を加えますが、安全な温度管理や適した施術部位の選定を行っています。

上述のように、お灸を施す際は皮膚に専用のシールを貼ったり台座を付けたりして、やけどをさせないよう徹底し、心地の良い温かさを提供しています。

お灸施術後、軽い赤みが出ることがありますが、これは熱が体内に侵入した反応で、数時間すると消失します。

鍼灸師は国家資格

鍼灸師は「はり師」「きゅう師」という国家資格です。
東洋医学の知識はもちろん、解剖学、生理学などの現代医学や公衆衛生など医療の知識と技術を専門的に身につけ、日々研鑽を積んでいます。
参考:(公社)福岡県鍼灸マッサージ師会|はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師は国家資格


施術前には患者の健康状態を診察し、適切な施術を行うための情報を収集します。これにより、患者の体調に合わせた安全な施術を提供しています。

また万が一、施術中に体調が悪くなった場合でも、鍼灸師は適切な対応ができるよう訓練されているんです。

国家資格である以上、常に安全性の配慮が必要です。そのため鍼灸師団体は学術機関や教育機関などと連携し「鍼灸安全対策ガイドライン」を作成。施術事故や感染症などの対策を日々更新して、安全で適切な施術に努めています。
参考:鍼灸安全対策ガイドライン2020年版


以上、今回は鍼灸施術の基本知識とその効果・仕組みについてでした。
企業様、そして働く皆様に少しでも〝鍼灸〟を知っていただけたら幸いです!

最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後も福岡みらいテラス鍼灸をよろしくお願いします!