女性特有の健康課題と健康経営:福岡の鍼灸師が解説
女性の社会進出が進む一方で、月経や更年期、不妊治療など、女性特有の健康課題が働く現場に与える影響やその対応策は、いまだ十分に理解されているとは言えないのではないでしょうか。
これらの不調は個人の問題として扱われがちですが、実は生産性や離職率にも直結する経営課題です。
健康経営は、こうした “見えにくい不調” でもある女性特有の健康課題への対応を、重要なテーマの一つとして捉えています。
本記事では、健康経営の視点から「女性特有の健康課題」に対する理解と考え方、そして働く女性の健康推進に向けた施策ポイントを、福岡みらいテラス鍼灸の鍼灸師が解説します。
女性が抱える健康課題と現状
働く女性(働く女性に限らず)は、生涯にわたってさまざまな特有の健康課題に直面しています。
では、女性が抱える健康課題が何なのか、またそれらが「働く女性」や「企業・経済」にどのような影響を与えているのでしょうか。
女性が抱える健康課題
経済産業省の報告「健康経営における女性の健康の取り組みについて」では、“女性従業員の約5割が「女性特有の健康課題などにより職場で困った経験がある」”との回答があります。
そのうち多くの共通している健康課題は以下が挙げられます。
・月経関連の症状や疾病
・PMS(月経前症候群)等
・更年期障害
・メンタルヘルス
・不妊・妊活関連
・女性のがん・女性に多いがん

出典:健康経営における女性の健康の取り組みについて 平成31年3月|経済産業省 ヘルスケア産業課 6ページ
一方、職場の管理者では上記の図のように、約4割が女性特有の健康課題への対処に困っているとの回答があり、最も多いのが「メンタルヘルス」への対応です。
職場における現状
上記のように女性は特有の健康課題を抱えており、働く女性の約半数近くが、それら健康課題により職場で何らかの問題を経験されています。
その上で、職場における女性従業員を取り巻く現状を見ていきましょう。
経済産業省による「働く女性の健康推進に関する実態調査」では、
『女性特有の健康課題・症状が原因で職場で何かをあきらめた経験有無(従業員女性)』の質問に対し、全体では “そういう経験はない” が57.5%を占めていますが、42.5%が何かをあきらめた経験があり、 “正社員として働くこと” が 24.6%でトップ、次いで “昇進や責任の重い仕事につくこと” が20.4%となっています。
正社員の地位やキャリアアップを断念する人は、20%~25%程度も存在しており、 年代別では “昇進や責任の重い仕事につくこと” は、20代・30代の従業員ほどあきらめた経験が多いという結果がわかります。

出典:「働く女性の健康推進」に関する実態調査 平成29年|経済産業省
では、職場において何らかのことをあきらめた経験があると回答した女性従業者には、具体的にどのような健康課題が原因となったのでしょうか 。
同じく「働く女性の健康推進に関する実態調査」では、
全体では “妊娠・出産に関する症状・疾病” の18.9%がもっとも多く、次いで “月経関連の症状や疾病” の17.4%、“メンタルヘルス” の15.6%、“PMS(月経前症候群)” の12.5%となっています。
年代別に見ると、30代では、特に “月経関連の症状や疾病” 、“不妊・妊活” であきらめる割合が一般モニターに比べ高く、50代以上では “更年期障害” であきらめる割合が一般モニターに比べ高い結果が出ています。

出典:「働く女性の健康推進」に関する実態調査 平成29年|経済産業省
女性特有の健康課題による社会全体の経済損失は年間約3.4兆円!
次は女性特有の健康課題が社会に及ぼしている『社会全体への経済損失』です。
性差に基づく多数ある健康課題のうち、規模が大きく、さらに経済損失が短期で発生するため職域での対応が期待される4項目(月経随伴症・更年期症状・婦人科がん・不妊治療)を抽出した労働損失等の経済損失は、なんと年間約3.4兆円と推計されています。

出典:健康経営における女性の健康課題に対する取組事例集 令和7年3月(初版)|経済産業省
年間約3.4兆円。この金額は、地方自治体の年間予算や大企業数社分の売上に匹敵するほどの規模であり、決して無視できるものではありません。
適切な支援や対策が進まなければ、同規模の損失が毎年繰り返されているという現実を示すという考え方もできるのではないでしょうか。
働く女性の健康において企業に求められるサポート
ここからは、働く女性において「女性従業員が会社に求めるサポート」と「管理職が会社に求める女性の健康についてのサポート」、そして「女性従業員と企業との認識の不一致」についてデータとともに紹介していきます。
女性従業員が会社に求めるサポート
経済産業省の報告に以下のデータがあります。
女性従業員に向けた質問、『女性特有の健康課題などにより職場であきらめなくてはならないと感じたことはありますか』に対し “あきらめた経験がある” と答えた人達に、さらに『その際に職場で必要と感じたもの、あれば助かったと思われるものはどんなものがありますか』という質問をしたところ多く挙がったのが、
・会社による業務分担や適切な人員配置(41%)
・治療などのための休暇制度や柔軟な勤務形態を支えるサポート(33%)
・上司や部署内でのコミュニケーション(32%)

出典:健康経営における女性の健康の取り組みについて 平成31年3月|経済産業省 ヘルスケア産業課 9ページ
管理職が会社に求める女性の健康についてのサポート
管理職に向けた質問、『女性特有の健康課題などの事情を持つ女性部下への対応が必要となった際、職場で必要と感じたもの、あれば助かったと思われるものはどんなものがありますか』では、
“産業医や婦人科医・カウンセラーなど専門家への相談窓口” の設置という回答が最も多い結果が出ています。

出典:健康経営における女性の健康の取り組みについて 平成31年3月|経済産業省 ヘルスケア産業課 10ページ
この結果から、管理職もどのような対応をすれば良いかわからず、外部専門家のサポートを求めているのではないかと推察されます。
女性従業員と企業との認識の不一致
三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「正社員男女の健康意識に関する実態調査(2022-04)」では、約7割の女性が“健康や体に関する十分な支援がないと感じている” との報告があります。
また、2023年に東京都で実施された都内で働く女性3500人と企業担当者200人へのアンケート調査の『女性特有の健康課題に対して、職場にどのような配慮があると働きやすいと思いますか?』への回答では、“上司や周囲の従業員の理解” が最も多く、約7割にのぼります。
一方、同調査の企業担当者への質問、『対策や従業員へのサポートを行う上で、困っていること・課題となることは?』への回答で多かったのが、“何をすればいいかわからない”、次いで “当事者である従業員と話ができない” という結果が出ています。

出典:健康経営における女性の健康課題に対する取組事例集 令和7年3月(初版)|経済産業省
女性従業員側の支援ニーズが大きい一方、企業側はその「ニーズを把握しづらく、何をすべきかわからない」というミスマッチが起きているのが現状です。
以上のことから、企業には女性従業員の声を正しく把握し、管理職も含めた組織全体での理解促進と、実効性のある支援策の導入が求められています。
女性の健康施策推進の考え方と取り組み例
ここまで、女性特有の健康課題とそれに対する職場での現状、企業に求められているサポートを見てきました。
では、これらの課題にどう向き合うべきなのでしょうか。
健康経営の視点では、「理解の促進」「組織体制づくり」「投資」「働き方の調整」を段階的かつ継続的に進めることが、実効性の高い女性の健康施策につながるとされています。

出典:健康経営における女性の健康課題に対する取組事例集 令和7年3月(初版)|経済産業省
ここからは女性の健康施策推進の考え方と、その取り組みの概要を順に解説していきます。
理解の促進
女性特有の健康課題は、本人以外からは見えにくく、職場で共有されにくいという特徴があります。
経済産業省の調査でも、体調不良を抱えながら働く「プレゼンティーイズム」が生産性低下の大きな要因であることが示されており、特に女性の健康課題は影響が長期化しやすいとされています。
そのため、まず重要なのは、『経営層・管理職を含めた正しい知識の共有』と『 “個人の問題” ではなく “職場全体の課題” として認識すること』です。
そのための取り組みとして、
・経営層からのメッセージ発信
・ヘルスリテラシー向上プログラム
・管理者向け研修
・全社員向け意識改革プログラム
などがあります。

社内研修やセミナー、社内資料の配布などを通じて、症状の理解と配慮が当たり前となる職場風土づくりを進めることが、すべての施策の土台となります。
特に、経営層からのメッセージ発信や管理職向け研修など、制度やサポートを利用しやすい体制・雰囲気の醸成が必要です。
企業における組織体制づくり
女性の健康課題を理解し、健康施策を推進するためには、企業組織としての体制整備が重要になります。
・女性登用
・ダイバーシティチーム

また、健康経営に取り組む企業では、以下のような体制づくりも進められています。
・健康経営推進担当者や委員会の設置
・人事・総務・管理職が連携する仕組み
・産業医や保健師など外部専門職との連携
特に女性の健康施策では、相談しやすい窓口の存在が重要です。
「誰に相談すればよいかわからない」という状態をなくすことで、早期対応や重症化予防につながり、結果として企業のリスク低減にも寄与します
こうした組織体制を整えることで、女性の健康やキャリアに関する課題を個人任せにせず、企業全体で継続的に取り組む仕組みづくりが可能となります。
積極投資
女性特有の健康課題による経済損失は、社会全体で年間約3.4兆円規模と推計されており、企業単位でも生産性低下や休職・離職という形で影響があらわれます。
健康経営の先進企業では、女性の健康に対して「 “コスト” ではなく “投資” として捉える考え方」が広がっており、経済産業省でも以下のような制度を紹介しています。
・サービス・ツール支援制度
・費用補助制度
・物品補助制度

これらは短期的な欠勤対策だけでなく、長期的な人材定着・エンゲージメント向上につながる施策として活用されています。
働き方の調整
女性の健康施策を実効性のあるものにするためには、柔軟な働き方の調整が不可欠です。
症状には個人差があり、日によって体調が大きく変動するケースも少なくありません。
そのため、以下のような制度を設けることが推奨されています。
・休暇制度
・フレックスタイム制度

他にも体調に応じた、業務量・業務内容の調整などの選択肢を用意することで、「無理をして働く」「我慢して抱え込む」状態を防ぐことができます。
働き方の調整は女性だけでなく、すべての従業員にとって働きやすい職場環境づくりにもつながる点が、健康経営の大きなメリットです。
働く女性の健康施策推進の取組例まとめ
女性のための健康施策は、大がかりな制度改革から始める必要はありません。
経済産業省が示す取組例では、「日常の業務や職場環境の中で “明日から始められる工夫” 」が多く挙げられています。

出典:健康経営における女性の健康課題に対する取組事例集 令和7年3月(初版)|経済産業省
●理解促進
まずは、女性に多い体調不良や悩みについて知る機会を作ることが第一歩です。
社内発信での情報共有やオープンな対話の場づくりなどは、従業員一人ひとりの気づきを促し、職場全体の理解向上につながります。
●企業における組織体制づくり
体調や困りごとを「伝えやすい仕組み」を整えることも重要です。
ビジネスチャットを活用した体調共有、女性同士が交流できる場の設置など、小さな仕組みづくりが、相談のハードルを下げ、健康課題を抱え込まない職場環境を生み出します。
●積極投資
女性の健康を守る取り組みは、コストではなく生産性と定着率を高める投資です。
社内への運動器具の設置、ウォーキング施策、生理用品やケア用品の備えなど、比較的導入しやすい施策でも、日々の体調管理や不調の予防に効果を発揮します。
●働き方の調整
体調には個人差があることを前提に、柔軟な働き方を認める姿勢が求められます。
体調に応じた作業姿勢の変更や服装・靴の自由度を高めるといった配慮は、無理をせず働き続けられる環境づくりにつながります。
このように、女性のための健康施策は「理解 → 仕組み → 投資 → 働き方」を段階的に整えることで、特別な負担をかけずに推進することが可能となりえます。
健康経営の視点で取り組むことで、女性だけでなく、すべての従業員が働きやすい職場づくりへとつながっていきます。
女性の健康保持・増進の必要性
現代社会において、働く女性や家庭を支える女性が健康であることは、個人の生活の質を高めるだけでなく、企業や社会全体の生産性・持続可能性にも直結しています。
女性は思春期から妊娠・出産、更年期、老年期へと人生の各段階で特有の健康課題を抱えることが多く、これらへの対策はライフステージを通じた健康保持・増進の重要な柱となります。

出典:健康経営における女性の健康の取り組みについて 平成31年3月|経済産業省 ヘルスケア産業課 3ページ
また近年、健康経営を推進する企業の間では「女性の健康」が重要なテーマとして強く認識されるようになっています。
下図に示す経済産業省の報告では、健康経営を積極的に推進する企業において、その取り組みの中で「女性特有の健康問題対策」への関心が56%と最も高く、他の施策を上回っています。

出典:健康経営における女性の健康の取り組みについて 平成31年3月|経済産業省 ヘルスケア産業課 1ページ
これまで述べてきたように、月経随伴症状や更年期症状など女性特有の健康課題が、欠勤やプレゼンティーイズム(体調不良による生産性低下)につながりやすく、企業活動に直接的な影響を及ぼしているためだと考えられます。
女性の活躍推進や人材確保の観点からも、安心して働き続けられる健康支援体制の整備は欠かせません。
女性の健康保持・増進に取り組むことは、個人のQOL向上にとどまらず、企業の生産性向上や持続的成長を支える重要な基盤であり、今後の健康経営においてますます必要性が高まっていくといえます。
まとめ
女性が心身ともに健やかに働き続けるためには、個人の努力だけでなく、企業による理解と支援が欠かせません。
女性の健康保持・増進を大切にする職場づくりは、結果としてすべての社員にとって働きやすい環境にもつながっていきます。
また、“次世代への健康” とも深くつながると言えるのではないでしょうか。
女性特有の健康課題を正しく知り、必要なサポートを行うことは、健康経営の本質そのものです。
自社の規模や状況に合わせた形で、無理のない取り組みを継続していくことが鍵となります。
福岡みらいテラス鍼灸は、健康経営サポートとともに、鍼施術とストレッチケアを取り入れたサポートを行い、働く女性のコンディション維持と働きやすい環境づくりを支援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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