健康経営優良法人認定制度とは:福岡の鍼灸師が解説

働く人の健康を大切にする企業が増える中、「健康経営」が注目を集めています。

その取り組みを“見える化”し、対外的にも高く評価される制度が「健康経営優良法人認定制度」です。

本記事では福岡みらいテラス鍼灸の鍼灸師が、この制度の概要やメリット、申請の流れなどをわかりやすく解説します。


健康経営優良法人認定制度とは?

「健康経営優良法人認定制度」は、職場の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に健康経営を実践している優良な法人を認定する経済産業省等が設計した公的な顕彰制度です。

優良な健康経営に取り組む法人を選定し“見える化”することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む企業」として社会的に評価を受けることができる環境が整備されています。

健康経営優良法人の認定には、以下の2部門に分かれています。
大規模法人部門
(大企業や上場企業)
中小規模法人部門
(地域の中小企業や個人事業主など)

出典:これからの健康経営について 2025年4月|経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課 13ページ

大規模法人部門の中で特に優れた取り組みを行っている企業500社には「ホワイト500」、中小企業部門では「ブライト500」という称号を付加しています。

また2024年度からは、中小企業部門のブライト500に次ぐ取り組みを行っている企業1000社を選定した「ネクストブライト1000」が新設されています。

健康経営優良法人に認定されると、認定ロゴマークの使用が可能になるほか、自治体や金融機関においてさまざまなインセンティブが受けられるようになります。


これまで「健康経営銘柄」という認定制度はありましたが、対象となるのは東京証券取引所の上場企業であったため、認定基準が一部の企業に限られていました。

健康経営優良法人認定制度は、より多くの企業が健康経営に取り組めるようにするため、上場・非上場を問わず、また大企業・中小企業も対象として2016年から開始された制度です。

~『健康経営』についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひ併せてお読みください
●企業の未来を変える「健康経営」:基本的概要とそのメリットを福岡の鍼灸師が紹介


健康経営優良法人 3つのメリット

健康経営優良法人に認定されると、企業には次のようなメリットがあります。

1.企業価値の向上

健康経営優良法人として認定を受けることは、企業が「従業員の健康を重視し、持続可能な経営を実践している」ことの客観的な証明になります。

近年は、SDGsやESG投資といった社会的責任を重視する潮流の中で、企業の“人を大切にする姿勢”が、取引先や金融機関、求職者などからの注目ポイントとなっています。

健康経営の取り組みを継続し客観的な評価を受けることで、社内の健康管理レベルを向上させながら、企業ブランドの信頼性も高めることができるでしょう。

2.人材の定着や採用に有利

健康経営優良法人に認定されると、健康に配慮した企業として、若手人材や働きやすさを重視する人からの注目が集まりやすくなります。

実際に報告があった中小企業における健康経営の効果事例を挙げると、

・『健康経営の取り組み以降の退職者なし。』
 (A’s社会保険労務士法人)
・『前年比で採用倍率が4倍に増加。』

 (日美商事株式会社)
などがあります。

出典:これからの健康経営について 2025年4月|経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課 54ページ


健康経営によって、従業員にとって働きやすい環境を整えることで「人材の定着」につながります。
さらに健康経営優良法人というブランドイメージが「優秀な人材の獲得」といった採用に有利な結果が現れているようです。

日経新聞社で実施された「働き方に関するアンケート」では、就活生・転職者の約6割が「企業が健康経営に取り組んでいることが就職先の決め手になる」と回答しています。

また、求職者が働く職場に望むものに対する回答のトップは「心身の健康を保ちながら働けること」になっており、多様な価値観を持つ働く世代において健康経営が重要な要素を持っています。

出典:これからの健康経営について 2025年4月|経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課 48ページ

以上のことから、健康経営の実践は「従業員を大切にする企業」ということにつながり、人材の定着や採用において有利に働くといえるでしょう。

3.公的支援や優遇措置も

国、また自治体によっては、健康経営優良法人認定企業に対して融資・補助金・入札の優遇などが用意されています。

◆公共調達・入札での加点

多くの自治体で、健康経営優良法人認定企業に対して公共事業の入札審査において“加点措置”を設けています。

例えば公共工事や施設設備等の入札において数点の差が結果を左右することもあるため、入札参加に関わる企業では重要なインセンティブとなります。

◆融資条件・金融支援の優遇

健康経営優良法人の認定を受けた企業は、金融機関や信用保証協会による融資の金利引き下げや保証料の減免などの優遇を受けられる場合があります。

さらに、従業員が住宅ローンや個人ローンを組む際、企業の認定によって従業員個人にも金利優遇が適用される例があります。

◆助成金・補助金での加点対象

健康経営優良法人は、自治体や国の助成金や補助金申請時も“加点対象”として評価されることが多く、採択率の向上や受給額の上限拡充につながる可能性があります。

特に健康経営関連の助成制度を活用する場合、認定があることで申請審査でプラス評価が期待できます。

◆保険料の割引制度

一部の損害保険会社や生命保険会社では、健康経営に積極的に取り組んでいる企業に対して「団体保険料の割引制度」を提供している場合があります。

これは、企業の健康リスクが低いと判断されることで適用され、福利厚生として従業員にもメリットとなります。

健康経営優良法人の認定は、単なる社内施策の証明以上に、企業イメージ向上や人材定着、採用や資金調達の優位性などにも直結する“外部評価”になり得ます。

経営者や健康経営担当者の方にとって、必ず押さえておきたいメリットではないでしょうか。


「健康経営優良法人」部門の申請区分

前述のように、健康経営優良法人の認定には「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」2部門に分かれており、認定を受ける際には、以下の区分を参考に申請を行います。

「健康経営優良法人」部門の区分

業種【大規模法人部門】【中小規模法人部門(いずれかに該当すること)】
従業員数従業員数資本金または出資金額
卸売業101人以上1人以上100人以下1億円以下
小売業51人以上1人以上50人以下5,000万円以下
サービス業101人以上1人以上100人以下5,000万円以下
製造業その他301人以上1人以上300人以下3億円以下

従業員数が大規模法人部門に該当し、かつ、資本金または出資金額が中小規模法人部門に該当する場合は、大規模法人部門・中小規模法人部門のいずれかに申請することが可能であり、両部門に申請することはできません。

従業員の定義について、「常時使用する従業員」(労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」)は対象として含める必要があります。

また、以下に該当する労働者以外はすべて含める必要があります。
・日々雇い入れられる者
(1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合は含める)

・2か月以内の期間を定めて使用される者
(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は含める)

・季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
(所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は含める)

・試みの使用期間中の者
(14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は含める)

なお、契約社員、パート・アルバイト、他社からの出向者、他社からの派遣社員等については、「常時使用する社員」に至らない場合であっても健康経営の施策の対象になっている場合は、当制度における「従業員」に含めることができます。

会社法上の会社等および士業法人の申請区分について、大規模法人部門は業種に応じた従業員数、中小規模法人部門は業種に応じた従業員数または、資本金の額または出資の総額が上記基準に該当すれば当該部門に申請が可能です。

それ以外の法人については、従業員数のみで区分されます。
詳しくは下記「ACTION!健康経営」のサイトでご確認ください。

参考:ACTION!健康経営「申請区分について」


認定申請方法

健康経営優良法人は年に1回認定されます。
認定を受けるには申請が必要ですので、以下より申請から認定までの流れについてご紹介します。

大規模法人部門の申請から認定の流れ

ステップ1:「健康経営度調査票」をダウンロードする

健康経営優良法人認定事務局が実施する「健康経営度調査」をダウンロードし回答します。

この調査票を入手するには「ACTION!健康経営」というポータルサイト内の「新規ID発行」サイトにアクセスのうえ、企業ごとに発行されるIDを取得しダウンロードします。

詳細は、下記ポータルサイト内「新規IDの取得について」をご参照ください。
「新規IDの取得について」

なお、過去に調査に回答したことがある場合には、過去の登録メールアドレス宛に健康経営度調査の受付開始時に案内のメールが届きます。

参考:ACTION!健康経営「令和6年度 健康経営度調査票」サンプル

ステップ2:「健康経営度調査票」に回答しアップロードする

健康経営度調査の設問に対する自社の取組状況を回答します。

なお、健康経営優良法人認定に申請する場合は、健康経営度調査に関する設問で「申請する」を選択。
期限内(おおよそ8月中旬~10月中旬)に必要事項を記載した健康経営度調査票を専用サイトにアップロードします。

ステップ3:認定申請料を支払う

大規模法人の場合、申請受付締め切り後、11月上旬に請求書が届きます。

健康経営度調査の回答時に希望した配布方法(メールもしくは郵送)にて届き、おおよそ12月中に、認定申請料(税込88,000円/件)を振り込みます。

グループ会社との合算で申請する場合、申請主体となる上記認定申請料88,000(税込)円に加え、同時認定の対象となる合算1法人当たり認定申請料(税込16,500円)が加算されます。また、健康経営度調査への回答のみを行う場合は、認定審査は行われないため認定申請料は不要です。

健康経営度調査に回答すると結果を要約したフィードバックシートが返却されます。
12月頃に速報版が送付され、次の年の3月頃に送付される確定版で認定の有無が決定します。


【健康経営優良法人認定(大規模法人部門)の申請スケジュール】

出典:ACTION!健康経営「申請書について」



中小規模法人部門の申請から認定の流れ

ステップ1:「健康宣言」を行い、申請資格を得る

加入している保険者(協会けんぽの各都道府県支部、健康保険組合連合会の各都道府県連合会、国保組合等)が実施している「健康宣言事業」への参加が必須となります。

加入している保険者が健康宣言事業を実施していない場合は、各自治体が実施する健康宣言事業への参加をもって代替可能です。
保険者・自治体のいずれも健康宣言事業を実施していない場合、自社独自の健康宣言の実施をもって代替可能です。

~『健康宣言』に関する解説は、以下の記事でも詳しく紹介してますのでそちらもチェックしてください
●「健康経営」まずやるべき3つのこと:福岡の鍼灸師が紹介

ステップ2:「健康経営優良法人認定申請書」をダウンロードする

初めて申請する企業は大規模法人部門と同様、「ACTION!健康経営」というポータルサイト内の「新規ID発行」サイトにアクセスのうえ、企業ごとに発行されるIDを取得し「健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定申請書」をダウンロードします。

詳細は、下記ポータルサイト内「新規IDの取得について」をご参照ください。
「新規IDの取得について」
なお、過去に申請したことがある場合には、過去の登録メールアドレス宛に健康経営優良法人認定申請の受付開始時に案内のメールが届きます。

参考:ACTION!健康経営「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定申請書サンプル」

ステップ3:「健康経営優良法人認定申請書」に回答しアップロードする

経営優良法人認定申請書の設問に対する自社の取組状況を回答します。

自社の取組状況が認定基準に達しているかを確認し、認定基準を満たしていると判断した場合は、期限内(おおよそ8月中旬~10月中旬)に必要事項を記載した健康経営優良法人認定申請書を専用サイトにアップロードします。

ステップ4:認定申請料を支払う

大規模法人部門と同様、申請受付締め切り後、11月上旬に請求書が届きます。

健康経営認定申請書の回答時に希望した配布方法(メールもしくは郵送)にて届き、おおよそ12月中に、認定申請料(税込16,500円/件)を振り込みます。

なお、健康経営優良法人認定申請書(中小規模法人部門)に申請したすべての法人へ、次の年の3月頃に評価結果(適合状況)送付され、ブライト500に申請した法人には、さらにフィードバックシートが送付され認定の有無が決定します。

【健康経営優良法人認定(中小規模法人部門)の申請スケジュール】

出典:ACTION!健康経営「申請書について」

健康経営優良法人および健康経営銘柄の選考フロー

健康経営優良法人(健康経営銘柄含む)の申請から認定の流れをまとめると、

・大規模法人部門(東京証券取引所上場会社含む)
→「健康経営度調査」に回答し提出。
 認定審査等が行われ日本会議において認定される。
 (上場会社の場合、経済産業省および東京証券取引所が共同で選定を行う)

・中小規模法人部門
→加入している保険者が実施している「健康宣言事業」に参加。
 認定要件に該当する取組内容を「健康経営優良法人認定申請書」にまとめて提出。
 認定審査等が行われ日本会議において認定される。

出典:経済産業省「健康経営優良法人の申請について」



認定の基準と要件

健康経営優良法人の認定基準には、大きく以下5つの項目が設けられています。

1.経営理念・方針
健康宣言の社内外への発信など。

2.組織体制
健康づくり責任者、担当者の設置など。

3.制度・施策実行
定期健診受診率(実施率100%)など、定められた項目において大規模法人部門では16項目のうち13項目、中小規模法人部門では一定数のクリアが必要。

4.評価・改善
健康経営の実施について、大規模法人部門では「効果検証」、中小規模法人部門では「評価・改善」が必須。

5.法令遵守・リスクマネジメント(自主申告)
定期健診の実施、50人以上の事業場においてストレスチェックの実施、労働基準法または労働安全衛生法に係る違反により送検されていないこと、等が必須。

以下に大規模法人部門と中小規模法人部門の認定要件(2025年版)を記します。

【大規模法人部門の認定要件(2025年)



中小規模法人部門の認定要件(2025年)】

上記の認定基準は年度によって多少の内容変更が行われる場合があります。
そのため都度、下記「ACTION!健康経営」のサイトを確認することをおすすめします。

参考:ACTION!健康経営
出典:ACTION!健康経営|健康経営優良法人2025(大規模法人部門)認定要件
出典:ACTION!健康経営|健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定要件


まとめ

項目内容
制度名健康経営優良法人認定制度
認定主体経済産業省・日本健康会議
対象大規模法人/中小規模法人
認定メリット企業イメージ(信頼性)向上・採用強化・行政支援など
必須取組健診・労働時間対策・生活習慣病予防など

健康経営優良法人認定制度は、健康経営を実践している優良な企業を認定する顕彰制度です。

認定を受けるメリットには「企業イメージ向上」「人材定着・採用強化」などがありますが、従業員一人ひとりの“健康を守る”という大きなメリットになるものです。

そしてそれは、社会全体へのメリットにつながります。
より良い社会作りのために、健康経営優良法人の認定を受けてみてはいがでしょうか。

私たち福岡みらいテラス鍼灸は、企業様の健康経営の取り組みを「見える化」し、実践につなげるサポートを行っています。
また、鍼施術・ストレッチケアなどを福利厚生として導入し、プレゼンティーイズムや肩こり・腰痛対策にも貢献しています。

健康経営は、会社の未来への“投資”です。
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