健康経営とワークエンゲージメント :健康経営の基礎知識を福岡の鍼灸師が解説

近年、多くの企業が「健康経営」に取り組み始めています。これは従業員の健康を経営的な視点から考え、積極的に支援することで、企業の生産性や業績の向上を目指す取り組みです。

では、健康経営とともによく耳にするようになった「ワークエンゲージメント」とは何でしょうか?
本記事では、「健康経営」と「ワークエンゲージメント」の関係性や、企業が実践できる具体的なアプローチについて福岡みらいテラス鍼灸の鍼灸師が解説します。


ワークエンゲージメントとは?

ワークエンゲージメントの意味

ワークエンゲージメントとは、「仕事に対するポジティブで充実した心理状態」のことを指します。オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが確立した概念で以下のように定義されています。

“ワークエンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である”

出典:ワーク・エンゲイジメントに注目した個人と組織の活性化|島津 明人 東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野

3つの要素

ワークエンゲージメントを構成する要素として以下の3つが挙げられます。

活力:仕事から活力を得ていきいきとしている

熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている

没頭:仕事に熱心に取り組んでいる

引用:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-第Ⅱ部第3章|厚生労働省

ワークエンゲージメントは、仕事に関して上記3つの要素が満たされている状態のことをいいます。
つまり、ワークエンゲージメントが高い従業員は、いきいきと自発的に働き、組織の成果にも貢献しやすくなります。


健康経営とワークエンゲージメントの関係

健康経営とワークエンゲージメントは深い関わりがあり、2022年5月に発表された「人材版伊藤レポート2.0」においても、従業員エンゲージメントを高める取り組みとして〝健康経営への投資とWell-beingの視点の取り組み〟という項目が追加されています。

参考:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~ 令和4年5月|経済産業省 

健康経営の施策がうまく機能すると、従業員の身体的・精神的健康が保たれます。そしてこの健康状態の維持・向上は、自然とワークエンゲージメントの向上にもつながるのです。

例えば…

健康経営の取り組みワークエンゲージメントへの効果
①ストレスチェックの実施精神的な安定と自己理解の促進
②定期的な健康相談健康不安の軽減と安心感の提供
③働き方の見直しワークライフバランスの確保
④社内コミュニケーションの活性化帰属意識や仲間意識の強化

このように、健康経営は「人が本来持つ力」を引き出すための土台作り。その結果として、ワークエンゲージメントという「仕事に向き合う力」が育まれていきます。

福岡みらいテラス鍼灸では、企業様へ定期的に鍼施術・ストレッチケアを提供し、従業員の心身の不調や疲労を軽減することで、ワークエンゲージメントの重要な要素である「活力」の向上を目指しています。


健康経営×エンゲージメントで起こるポジティブサイクル

国内外での健康経営の普及促進に係る調査では、健康経営を推進している企業ほどワークエンゲージメントが高い結果となっており、主体的に仕事に取り組む従業員が多いことがわかっています。

出典:健康経営ガイドブック|健康経営優良法人認定事務局編 |2025年3月版 
原出典:株式会社アドバンテッジリスクマネジメント


健康経営の施策を実施することでワークエンゲージメントが高まると、組織にとって以下のようなポジティブサイクルが生まれると考えられます。

従業員の体調やメンタルが安定

前述の「健康経営ガイドブック」の中で、健康経営度調査への回答とエンゲージメントやストレス反応の関連を分析した結果、健康経営施策の実践によりワークエンゲージメントが高まることが報告されています。

従業員へのストレスチェック等を行うことで、メンタルヘルス問題への早期発見とともに、ワークエンゲージメントの向上も期待できます。

業務効率やチームワークが向上

ワークエンゲージメントの高い従業員は、自ら進んで業務に取り組み、集中力やモチベーションアップが高まります。これにより、主体的に仕事をこなす習慣が形成され、短時間で質の高い成果を出せるようになることが考えられています。

また、高いワークエンゲージメントは、従業員同士のポジティブなやりとりや組織への帰属意識が生まれます。

その結果、日常的なコミュニケーションが活性化し協力し合う職場環境につながります。

生産性アップ・企業の評価が向上

厚生労働省が発行した『労働経済の分析(令和元年版)』では、ワークエンゲージメントを向上させることは、生産性の向上につながる可能性が示唆されています。

ワークエンゲージメントの向上は、自己啓発学習への意欲への動機づけや創造性が高まることなどがわかっています。

また、健康経営の実践が社外にも認知されることで、企業イメージの向上や採用力の強化、顧客・取引先からの信頼獲得にもつながっていきます。

健康を重視する姿勢は「人を大切にする会社」として評価され、社会的信用とブランド価値の向上にも貢献されるでしょう。

従業員の満足度や定着率もアップ

従業員が心身ともに健康で、やりがいや一体感を感じながら働ける環境は、職場への愛着や満足度を高めます。

ワークエンゲージメントの高い職場環境では、働く意味や貢献実感を得やすく、離職意思が低下する傾向にあります。

さらに、健康や働きやすさへの配慮がある会社は「長く働きたい」と思える魅力的な職場と感じられ、優秀な人材の定着・流出防止にもつながります。これは、企業にとって人材の投資効果を高める重要な要素となります。

このような「良い循環」が生まれることで、企業全体が持続的に成長しやすくなるといえるでしょう。


ワークエンゲージメントの尺度

従業員が前向きに働けていることを示すワークエンゲージメント。

それを表す指標は、生産性や定着率、企業の活力と直結する重要な要素となります。

ここからはワークエンゲージメントを可視化・評価するための尺度を解説します。
従業員のワークエンゲージメントの尺度を測るには、次の3つの手法があります。

①UWES(Utrecht Work Engagement Scales)

②MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)

③OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)

②MBI-GSと③OLBIは、直接ワークエンゲージメントを測定するのではなく、ワークエンゲージメントとは対極の概念であるバーンアウト(※)を測定する方法です。

ここでは①UWESについてご紹介します。

(※)バーンアウト(燃え尽き):仕事に対して過度のエネルギーを費やした結果、
疲弊的に抑うつ状態に陥り、仕事への興味・関心や自信を低下させた状態


UWES(Utrecht Work Engagement Scales)

世界的に最も広く使われているのが、オランダのシャウフェリ教授らによって開発された「UWES(Utrecht Work Engagement Scale)」です。

ワークエンゲージメントを構成する3つの要素「活力」「熱意」「没頭」を9または17の項目(※)に盛り込み、質問形式で測定していきます。

(※)9項目版(UWES-9)と17項目(UWES-17)版がある

質問項目例(UWES-9より一部抜粋)

・仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる。
・自分の仕事に誇りを感じる。
・仕事にのめり込んでいる。

上記の質問項目に対し、7段階評価(「全くない」~「いつも感じる」)で回答していきます。
この方法は高い安定性を持っていることから、広く活用されています。

福岡みらいテラス鍼灸では、UWES-9を使用し企業様のワークエンゲージメント尺度を可視化することで、健康経営施策の効果をご提供しています。

参照:ワーク・エンゲイジメント(UWES) – 島津明人研究室 慶応義塾大学 総合政策学部


ワークエンゲージメントを高めるための2つのポイント

ワークエンゲージメント向上のポイントは、大きくわけて以下2つの工夫がポイントとなります。

●組織ができる工夫
●従業員個人ができる工夫

組織ができる工夫

組織ができる工夫では、従業員の「仕事の資源」を充実させる、つまり仕事の効率化を測る、人材の育成を行うなどを通じ、従業員のモチベーションを高めることが重要になります。

具体的には、

・職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化

・指導役や教育係の配置(メンター制度等)

などが挙げられ、これらの取り組みは企業における実施率の高さとワークエンゲージメント・スコアとの間に正の相関があると予想されています。

従業員個人ができる工夫

従業員個人ができる工夫として「個人の資源」を充実させる、というのがあります。

「個人の資源」とは、心理的なストレスを軽減させモチベーションをアップさせるなど、働く個人の内的要因を示します。

具体的には、

・自己効力感を高める

・ポジティブ思考を育む

などが挙げられます。

「個人の資源」の中でもワークエンゲージメントとの相関が高いのが自己効力感であり、これを高める取り組みに「ジョブ・クラフティング」があります。

ジョブ・クラフティングとは、自分の仕事の内容や進め方、人とのかかわり方を主体的に見直し、働きがいを高める工夫のことです。

例えば、得意な業務に重点を置く、やりがいを感じる目標を設定する、ポジティブな関係を築くなど、従業員が自らの仕事を変化させながら、仕事の意義を高めていく主体的なプロセスといってもよいでしょう。

自身の強みを活かし仕事に意味を見出すことで、よりポジティブに仕事に取り組むことにつながります。

この取り組みを通じて「自分でもできる」という感覚=自己効力感を育みます。


まとめ

ここまでワークエンゲージメントについて解説をしてきましたが、「何から始めればいいかわからない」という企業様も多いと思います。まずは以下のようなことから始めてみてはいかがでしょうか。

●ワークエンゲージメント等の社内アンケートで「健康に関する課題」や「働き方の悩み」を把握する
●健康経営施策を考え、小規模でも構わないので実践する機会を設ける
●健康経営の社内宣言を発信し、従業員へのメッセージを届ける

健康経営とワークエンゲージメントは、企業の成長を支える“両輪”のような存在です。健康は単なる個人の問題ではなく、組織全体のパフォーマンスに直結します。

福岡みらいテラス鍼灸では、鍼施術・ストレッチケアの提供とともに、ワークエンゲージメント向上の提案を行っております。

まずはできることから一歩ずつ。
従業員が元気に、前向きに働ける職場を、一緒に目指していきましょう。