「健康経営」まずやるべき3つのこと:福岡の鍼灸師が紹介

経済産業省が推進している「健康経営」。

近年、多くの企業がこの取り組みを導入し、その効果が報告されています。

企業の持続的な成長と従業員の健康を両立させるための重要な戦略である健康経営を浸透させるためには、何からはじめたらよいのでしょうか。


本記事では、健康経営に興味はあるけれど、

「何から始めていいかわからない…」
「小さな会社でも取り組めるの?」

そのような経営者様、担当者様のために、福岡みらいテラス鍼灸の鍼灸師が、健康経営の取り組みを実践するうえで足がかりとなる3つのことをお届けします!

健康経営とは

まず健康経営とは何なのか?

経済産業省の健康経営ガイドブックでは以下のように記されています。

〝従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること〟

出典:経済産業省|企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)

つまり、従業員の健康保持・増進を図ることで企業の持続的成長を目指す経営手法として、健康経営が推進されています。

※健康経営はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。

目的

健康経営は以下の目的で推進され、取り組まれています。

・組織活性化・生産性の向上
・従業員の健康増進・活力向上
・企業の業績、価値の向上
・国民の健康増進
・経済成長 など

企業が従業員の健康保持・増進など、健康投資に取り組むことにより、従業員の活力向上や生産性の向上など組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や価値向上、ひいては社会発展の寄与へつながることが期待されています。

健康経営は経済産業省が中心となって推進されている政策で、従業員の健康増進等にかかる支出をコストではなく「健康投資」として捉え取り組むことが重要視されています。

健康経営に関する解説は、以下の記事でも詳しく紹介してますのでそちらもチェックしてください。

【企業の未来を変える「健康経営」:基本的概要とそのメリットを福岡の鍼灸師が紹介】


健康経営に取り掛かる際、まずやるべきことは以下の3つです。

I.健康宣言をしよう

II.現状のチェックをしよう

Ⅲ.担当者を決めよう

順に詳しくご紹介していきます。


健康宣言をしよう

健康経営を進める第一歩に、「健康宣言」があります。

経営者自身が健康づくりに取り組むこと、自社になぜ健康経営が必要だと思っているのか、それらを経営者様の言葉で従業員に語ることが重要です。

この経営者様のメッセージ=「健康宣言」を発信することが健康経営のスタートとなります。

健康宣言とは

健康経営における「健康宣言」は、企業が従業員の健康を重要な経営資源と捉え、積極的に健康増進に取り組むことを社内外に示す公的な宣言です。

以下に、健康宣言の基本的な内容をわかりやすく項目にわけて解説します。

1.経営トップの意思表明(健康経営を経営理念に明文化)

企業のトップ(代表取締役)などが、従業員の健康保持・増進を経営課題として位置づけ、経営理念の中に明文化して社内外に発信します。

2.健康への基本方針

健康宣言には、企業としての健康に対する基本的な考え方や重視する視点などを記載します。

3.具体的な取り組み内容

実施予定の健康施策を記載します。
例)
・定期健康診断の実施とフォロー
・メンタルヘルス対策(ストレスチェック、相談窓口の設置など)
・運動習慣の支援(社内ウォーキングイベントなど)
・禁煙支援や食生活改善支援 など

4.目標と評価指標

上に挙げた健康施策に関して、数値目標や達成基準を設定します。

例)
・健康診断受診率100%
・ストレスチェック実施率95%以上 など

5.社内外への周知・共有

健康宣言を従業員全体に共有し、企業のwebサイトなどでも外部に発信することで、信頼性のある取り組みとします。

健康宣言の基本的な内容については、下記経済産業省の資料に具体的な内容が記載されています。

経済産業省|企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ(改訂第1版)1ページ、51~63ページ

健康宣言の進め方(福岡県の場合)

健康宣言の基本的な内容は上で述べましたが、全国の協会けんぽや健康保険組合等では、企業の健康宣言を支援する取り組みが行われています。

初めて健康経営に取り組む際には、各地域の協会けんぽや健康保険組合等と連携しながら、「健康宣言事業」を推進していくのがよいでしょう。
(各都道府県単位で実施しているため、詳しくは各都道府県の保険者にお問合せください。)

ここで一例として、福岡県における健康宣言の進め方を紹介していきます。

ふくおか健康づくり団体・事業所宣言

福岡県では協会けんぽ福岡支部と共同で、職場での健康づくりに取り組む事業所等を「ふくおか健康づくり団体・事業所」として登録・サポートしています。

ふくおか健康づくり団体・事業所宣言に登録することが、福岡県においての「健康宣言」になります。

これに登録すると福岡県(ふくおか公衆衛生推進機構)から登録証が送付されます。
登録証を社内の見えるところに掲示し、取り組みについて従業員に周知しましょう。

ふくおか健康づくり団体・事業所宣言の簡単な流れは下図のようになります。

ふくおか健康づくり団体・事業所宣言に登録すると、自社の取り組みが福岡県関連のwebサイトで取り組みが公表されるほか、取り組みに応じて様々なサポートが受けられます。

また、「健康づくり優良事業所認定制度」があり、認定要件を満たした事業所を「健康づくり優良事業所」、特に取り組みが優良な事業所を「健康づくり優良事業所ゴールド」として認定。ロゴマークと認定証が発行されます。

出典:全国健康保険協会 福岡支部 ふくおか健康づくり団体・事業所宣言ー協会けんぽと一緒に健康経営をはじめませんか?ー

認定を受けることで、健康づくりに取り組む優良企業として対外的にもアピールすることができまので、健康経営に取り組むモチベーションもアップしますね!

ここからは、ふくおか健康づくり団体・事業所宣言でやることを紹介していきます。

宣言内容の『基本モデル』

健康経営の取り組みの第一歩として「ふくおか健康づくり団体・事業所宣言」に登録するには、以下の7分野から1つ以上を選択して具体的な取り組みを宣言します。

①特定健診の受診
②特定保健指導の利用(※)
③がん検診の受診
④食生活の改善
⑤運動習慣の定着
⑥禁煙(受動喫煙防止を含む)
⑦その他の健康づくり(メンタルヘルス、歯科衛生等)

(※)特定保健指導とは、健診結果より「メタボリックシンドローム」のリスクに応じ、生活習慣の改善が必要な方に行われる保健指導のこと。産業医の面談やかかりつけ医の診療のことではありませんのでご注意ください。

その中で、協会けんぽ福岡支部が提案している「基本モデル」がありますので下図に示します。

出典:全国健康保険協会 福岡支部 ふくおか健康づくり団体・事業所宣言(令和6年度版)リーフレット

福岡県における健康宣言の「基本モデル」には3つあり、

1つ目が、

上記①に挙げた「特定健診の受診」の健診受診率の目標値を設定します。

例)『従業員の健診受診率100%を目指します』

2つ目が、

上記②に挙げた「特定保健指導」利用率の目標値を設定。

例)『特定保健指導の利用率50%以上を目指します』

そして3つ目が、上記に挙げた7つの分野のうち③・④・⑤・⑥・⑦から1項目以上を選択します。

以上が、ふくおか健康づくり団体・事業所宣言の「基本モデル」での宣言登録内容です。

この宣言登録内容例のイメージを下図に示します。

出典:全国健康保険協会 福岡支部 ふくおか健康づくり団体・事業所宣言(令和6年度版)リーフレット

登録後、上述したように福岡県から、健康宣言を社内へ周知するための「登録証」が送付されます。

また、任意で「健康づくり実践アドバイザー」の派遣申込を無料ですることができ、保健師・管理栄養士の専門職から「事業所カルテ」を元に健康課題の確認や取り組みのアドバイスを受けることができます。

専門職からのアドバイスを受けることで健康宣言の内容を具体化し、より実現可能な取り組み内容として提案していただけます。

ここまできたら、いよいよ「健康経営」の実践です。
まずは宣言内容から、従業員の皆さんで実践していきましょう!

参考:ふくおか健康づくり県民運動|ふくおか健康づくり団体・事業所宣言

健康宣言のメリット

健康宣言のメリットは多くありますが、大きく以下の4つがあります。

従業員の健康意識の向上

健康宣言は、経営者が先頭に立って健康経営を進めていくというコミットメント(約束)です。

会社として健康に取り組む方針を打ち出すことで、従業員の健康への意識も高まりやすくなります。

健康管理や生活習慣の見直しに対する動機づけとなり、職場全体の健康文化づくりにもつながります。

企業の姿勢を社内外に明確に示せる

健康宣言は、「従業員の健康を大切にする」という企業の方針を社内外に発信するシンプルかつ効果的な手段です。

従業員の定着率向上につながる可能性があるだけでなく、採用活動や取引先への印象づくりにも寄与し、企業の信頼性やイメージ向上につながります。

健康経営のスタートを切るきっかけになる

健康宣言を行うことで、健康経営への第一歩を形にすることができ、社内での取り組みを体系的に進めやすくなります。

社内の健康課題を整理し、次のアクション(健康診断の受診率向上、ストレスチェック、運動習慣づくりなど)にスムーズにつなげられるでしょう。

外部支援(認定制度や助成金など)を受けやすくなる

健康経営を実践している優良な企業等法人を認定する顕彰制度の中で、特に中小規模法人部門の「健康経営優良法人認定制度」や、各都道府県が支援する「健康づくり事業」では、「健康宣言」が応募・支援の前提条件になっている場合があります。

また福岡県では、健康宣言を行うことで融資が受けられる等の特典があります。

以上のように健康経営の取り組みに先駆けて「健康宣言」を行うことは、職場全体の活性化やエンゲージメント向上が期待できます。
結果として、生産性向上につながることが期待できるのです。


現状のチェックをしよう

健康経営を始めるにあたり、自社の現状を大まかにでも確認しておくことも重要となります。

企業として従業員の健康を守り、生産性の向上等を目指すためには、どこに力を入れるべきか明確にする必要があります。

例えば、次のような項目をチェックしてみましょう。

・健康診断の受診率は?

・ストレスチェックの実施状況と結果は?

・従業員のメンタル不調や離職の傾向は?

・職場のコミュニケーションや雰囲気は良好か?

これらを把握することで、企業の「健康課題」が見えてきます。

さらにチェックしたデータは、今後の取り組みの効果を測るための“基準”にもなります。

また、自社の健康課題をチェックするには、協会けんぽが提供している「事業所カルテ」や「業態別カルテ」があります。

福岡県では、ふくおか健康づくり団体・事業所宣言に登録すると、任意で健康づくり実践アドバイザーから上記カルテを元に、健康課題の確認やそれに対する取り組みのアドバイスを受けることができるので活用するとよいでしょう。

現状を知ることは、健康経営の「出発点」であり「道しるべ」。

ここをおろそかにすると、的外れな対策になってしまうこともあります。
まずは、自社の“今”をしっかり整理し目標を設定してみましょう。

担当者を決めよう

健康経営に取り組む際、それを実践する組織を構築するため、社内で健康経営を推進する担当部署や担当者を決めます。

健康経営度調査の回答によると、経営トップが健康経営の最高責任者を担う企業が増加しています。

出典:経済産業省|これからの健康経営について 2025年4月経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課

ですがここでいう担当者は、必ずしも経営トップや人事、総務の専門家である必要はありません。社内外との連携を取りながら継続的に動ける人(部署)が適任です。

健康経営は単なる一時的な取り組みではなく、会社として継続的に進めていくべき“経営戦略”の一部です。そのためには、中心となって計画を立てたり、実行管理したりする。「旗振り役」が必要になります。
会社や事業所の規模によっては、複数名でチームを作るのも良い方法でしょう。

事業所が複数ある場合は、事業所ごとに担当者を決めていきましょう。
さらに、事業所ごとで取り組みの温度差が生じないように、全事業所の担当者が情報共有できる場の設定も検討が必要です。

担当者が決まると健康経営の目的や現在の課題を明確にしやすくなり、施策の立案や社内周知もスムーズに進みます。
また、外部の専門家(産業医や健康経営アドバイザー等)との橋渡し役も担いやすくなります。

「まずは誰が健康経営を推進していくのか?」を社内で話し合い、明確に決めることも健康経営の第一歩になります。

健康経営を推進する組織づくりのポイントを下図に示します。


まとめ

健康経営を導入するうえでまずやるべきことは以下の3つ。

I.健康宣言をする

II.現状のチェックを行う

Ⅲ.担当者を決める


この3つは、健康経営に取り組む際の第一歩となります。
「健康経営」は、貴社にとって新しい取り組みになるかもしれません。
そのような新しい取り組みを浸透させスムーズに実践させるには、上記3つは必要不可欠です。


今回の記事が、経営者様や担当者様のお役に立てれば幸いです。

福岡みらいテラス鍼灸は、貴社の健康経営を応援しています!

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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