鍼灸師って何を診てるの?:鍼灸施術の診察方法を福岡の鍼灸師が解説

鍼灸施術は、その効果が見直されている一方で〝診察方法〟に対する理解はまだまだ一般的ではないように思います。

病院では血液検査やレントゲンなど、身体の状態を数値化や見える化して診断しているのに対し、鍼灸師はそれらの診断ができません。
ではどのようにして鍼灸師は診察を行っているのか。

今回は、鍼灸師が身体の状態をどのように評価して最適な施術法を見つけ出しているのか、福岡みらいテラス鍼灸の鍼灸師がご紹介します。

この記事を読むと、皆様がより安心して鍼灸施術を受けていただけるのではないかと思います!

鍼灸の診察方法は大きく4つ

鍼灸施術における診察方法は大きく以下の4つがあります。

鍼灸施術を受ける際、診察がどれだけ重要になるかご存じでしょうか?
病院のような機器を使えない代わりに、色んな方法、さまざまな角度から身体の状態を確認して読み解いていきます。

診察を通じて身体全体の調和を探ることが、症状の改善に直結すると考えられている東洋医学、そして鍼灸施術。

それだけに鍼灸師は診察に時間をかけ、重要視しています。

次からは上記4つの診察方法について深堀りしていきましょう。

望診(ぼうしん)

望診は一言でいうと〝見て診察する〟方法で、以下のことを行っています。

色加減を診る

色加減を診るとは、文字通り患部とそれに関係する部位の色を診ています。例えば患部に赤みがないか、青白かったりしていないかなどを確認しています。

これはイメージしやすいかと思いますが、赤みがある時は熱を持っている状態で、青白い時は冷えている場合が多いです。

左右差を診る

左右差を診るとは、例えば症状が左足にある場合、患部やそこに影響を及ぼしている部位を診ますが、同時に反対の右足との違いも診ています。

左右の違いを観察することで、どこにどの様な原因があるのかを読み解いているんですね。

顔を診る

患者の顔色や顔の状態などを診る場合もあるんです。

東洋医学では、顔面の各部に五臓(肝・心・脾・肺・腎)の状態が反映されると考えられています。

下図のように顔の各部位には五臓が配置され、それらの部位に現れた状態(例えば色みやできものができていないか等)によって、どの内蔵器官に病変があるかを診察しています。

舌を診る

東洋医学では舌を診ることも大切な診察方法の1つで「舌診(ぜっしん)」といいます。
舌診では以下のように診察しています。

他にもたくさんありますが、舌の色みや形態を診て、身体の内側(内臓)や体調の具合といった、目に見えない症状を読み解く診察方法です。

どうでしょうか?皆さんの舌の状態、どうなってますか??普段から舌をみて健康チェックするのもよいかもしれませんね!


聞診(ぶんしん)

聞診とは、聴覚を利用して情報をキャッチする診察方法です。患者の声色や身体が発する異常音、呼吸の音なんかも診ます。

声色とは、声の大きさや張り、喋り方(早口や、独り言のように淡々と喋るなど)などを診て、その人の体質などを読み解いているんです。

身体が発する異常音は、例えば腹部が発する音を聴いて、そこに水分が多くないか、冷えていないかなどを観察します。

呼吸音に関しては、呼吸が浅いか深いかや、回数が多いか少ないか、また呼吸にゴロゴロとしたような音が混じっていないかなどを観察して、身体の状態を確認しています。

身体の異常音や呼吸音は、医師も聴診器を使って診察しますよね?鍼灸師も時には聴診器を使うこともあるんです。

実は聴覚以外では、嗅覚も聞診の種類に入るんです。患部など、身体が発している臭いを読み取って診察する場合もあります。

問診(もんしん)

問診とは、患者やそのご家族に、現在かかっている病気の状態や日常生活の様子などをたずねて診察することです。

問診でたずねる症状に関する情報には、具体的に以下があります。

また、上にある情報以外に、訴えている症状に一見関係なさそうな飲食・住居など、生活状況の情報を集めることも大切にしています。

これは、症状の原因には身体の中からによるもの(内因)と、生活環境や行動サイクル、季節の変化などによるもの(外因)があるという東洋医学の考え方に基づいています。

症状の原因を、内因と外因など丁寧に問診していくことで、その人の身体をより総合的に診察しているんですね。

切診(せっしん)

最後に切診です。切診は簡単に言うと〝身体に触れて診察する〟方法で、患部に触れるのはもちろん、鍼灸施術ではそれ以外の部位にも触れて診ていきます。

病院でいうところの「触診(しょくしん)」を指します。
ただ、病院で行われている触診とは多少異なるので、そちらを説明していきましょう。

脈診(みゃくしん)

脈診とは、手の脈の状態を診る方法です。病院でも脈拍を診られると思いますが、鍼灸施術の場合、診ている内容が多少違うんです。鍼灸施術では、脈の数や拍動の状態、強弱などを細かく診て、臓腑・経絡などの異常を観察しています。

患者の手首に鍼灸師の指を当てて脈の様子を診るんですが、左右の手首、そして両手首の3か所に指を当てて診ます。(下図)

なぜ3か所かというと、両手首の3か所(合計6か所)それぞれに五臓六腑の状態が現れるとされているからなんです。(下図)

鍼灸師の指で患者の手首を強く圧したり、反対に弱く圧することで、五臓六腑の状態を読み解き、症状との因果関係を探り出します。

腹診(ふくしん)

腹診とは腹部の様子を診て、臓腑の異常がないかを診る診察方法です。

鍼灸師の手のひらや指先で患者の腹部を押さえながら、圧痛や硬い部分、拍動などを観察していきます。

下図のように東洋医学では、おへそを中心に腹部の各部位に五臓の状態が現れると考えられています。

また、腹部を押さえられた時、患部と同じ側に圧痛などが生じることが多いんです。

例えば、左肩に痛みなどがある場合、おへその左側が他のおへそ周囲より圧痛を強く感じることがあります。

これって鍼灸施術を受けたことがある方は経験がありませんか?

身体がつながっている証拠で、この場合、左肩の痛みに腹部も影響している可能性があると、症状の因果関係を身体全体を通して診察しているんです。

ちなみに、福岡みらいテラス鍼灸が提供している企業様向けの鍼施術ケアでは「腹診」を取り入れています。

まとめ:診察の目的

以上が鍼灸施術の診察方法でした。
必ずしも鍼灸師全員が上記の診察をしていたり、全ての診察をしているわけではありません。しかし、これらを駆使しながらさまざまな角度から身体の状態を把握して、より最適な施術方法を提供しています。


そして診察には大切な目的が2つあります。
1つ目は、上述した〝最適な施術を提供すること〟
2つ目は〝鍼灸施術が適応か鑑別すること〟です。


例えば腰痛の場合、その原因には筋肉・神経・骨・内臓などさまざまな可能性があります。

筋肉や神経が原因の場合は鍼灸施術が適応ですが、神経の中でも「脳神経」が原因として絡んでいる可能性がある場合、専門医に診てもらう必要があります。

骨が原因と判断される場合は、もちろん専門医への受診をすすめています。

また、内臓が関係していると考えられる場合、その内臓機能が疲れているのが原因であれば鍼灸施術の出番ですが、内臓に何らかのできものがあると判断されるのであれば、専門医への受診をすすめています。
いずれの場合も、患者への説明を丁寧に行っています。


このように診察というのは、鍼灸施術の中だけでなく、より大きな枠組みで身体を診て、患者の症状を解決へ導くための最適解を探るものなんです。

どうでしたか?鍼灸師が何を診て、そして何を大切にして施術にあたっているのか、伝わることができたでしょうか。

これからも安心して鍼灸施術を受けていただくために、福岡みらいテラス鍼灸は日々研鑽を積んでおります。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後も福岡みらいテラス鍼灸をよろしくお願いします!

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