企業の未来を変える「健康経営」:基本的概要とそのメリットを福岡の鍼灸師が紹介
年々、企業の社会的責任が重要視されている中、社員の健康管理を積極的に推進する「健康経営」がクローズアップされています。
本記事では福岡みらいテラス鍼灸の鍼灸師が、健康経営の基本的概要からそのメリットに至るまで、経営者様や担当者様に役立つ情報を提供したいと思います!
健康経営とは?
経済産業省によって以下のように定義されています。
〝健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること〟
つまり、従業員の健康管理・増進を図ることで企業の持続的成長を目指す経営手法として、健康経営が推進されています。
※健康経営はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。
目的
・生産性の向上
・従業員の満足度向上
・企業のブランド力向上など
企業が従業員の健康管理・健康保持増進など、健康投資に取り組むことにより、従業員の活力向上や生産性の向上など、組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や価値向上、ひいては社会発展の寄与へつながることが期待されています。
また、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つとなっています。
参考:経済産業省|健康経営
背景
健康経営のざっくりとした歴史をご紹介した上で、推進されている背景を述べていきましょう。
健康経営は、1980年~1990年にアメリカで提唱された「健康な従業員こそが収益性の高い企業を作る」という考え方が基礎になっています。
これは「ヘルシーカンパニー」と呼ばれ、健康管理と企業経営を異なるものとするのではなく統合させることで、企業の業績は向上すると考えられています。
これを受け、日本でも2006年に「NPO法人健康経営研究会」が発足されました。
同研究会では「人という資源を資本化し、企業が成長することで、社会の発展に寄与することがこれからの企業経営にとってますます重要になっていくもの」としています。
参考:NPO法人健康経営研究会
さらに、取り組みを評価する指標として2014年に「健康経営銘柄」、2016年には健康経営優良法人認定制度」が経済産業省により創設され、推進の後押しとなっています。
健康経営が推進されている大きな背景に「少子高齢化による働き手不足」があります。また、定年年齢の引き上げに伴い、従業員の平均年齢が高くなっているのも要因のひとつです。
それに応じるように、健康経営を行う企業が増え、従業員が心身ともに健康になり長く働ける環境が作られることが狙いです。
また、企業価値も向上され、経済力強化や健康保険料削減といったメリットにつながることが期待されるため、経済産業省も力を入れて健康経営を推進しています。
健康経営に関する制度
健康経営に取り組むと、経済産業省(日本健康会議)から優良企業であると認定された企業に顕彰が贈られる制度があります。
「健康経営顕彰制度」といい、地域の健康課題に沿った取り組みや、日本健康会議が推進する内容を導入している優良法人に評価が与えられます。
健康経営に関する優良な取り組みをしている企業を評価し、健康経営を促進する目的で行われています。
次からは健康経営顕彰制度の種類をご紹介していきましょう。
健康経営優良法人認定制度(ホワイト500/ブライト500)
健康経営優良法人とは、健康経営に取り組む優良な法人として認定された大企業・中小企業・その他法人を指します。
健康経営優良法人認定制度は、優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」し、社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的とし、日本健康会議が認定する顕彰制度です。
ホワイト500/ブライト500
健康経営優良法人認定制度は、大規模法人部門と中小規模法人部門の2種類に分かれます。大規模法人部門の中で特に優れた取り組みを行っている企業500社を選出した称号がホワイト500であり、中小企業部門ではブライト500になります。

健康経営銘柄
健康経営銘柄は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定し公表しています。
健康経営を実施している上場企業の中から、特に優れた取り組みを実践している企業が選定されます。
また、長期的な視点で企業価値の向上を重視する投資家に対して、魅力ある企業であると紹介をしています。
国がその様な形で紹介することで、健康経営に取り組む企業が社会的に評価され、健康経営がさらに促進されることを目指しているのです。
参考:経済産業省|健康経営銘柄
健康経営優良法人、健康経営銘柄に認定されると、それぞれのロゴマークの使用が可能となる他、自治体や金融機関においてさまざまなインセンティブが受けられます。
健康経営で期待できるメリット
健康経営を実践する、つまり企業が従業員への健康投資に取り組むことで得られる効果には下図があります。

出典:経済産業省|健康経営の推進について(令和6年3月)スライド13
参考:ACTION!健康経営|健康経営とは
ここからは、健康経営によって得られるメリットを企業、従業員、社会の観点から深掘りしていきます。
企業へのメリット
せっかく健康経営を実践するのだから、それによって得られるメリットも知りたいところですよね。
企業のメリットは様々あり、その中でも3つをピックアップしました。
人材の確保・定着率の向上
健康経営の導入は、従業員の健康や福利厚生に対する企業の取り組みが明確化されます。
大手転職サイトでは健康経営優良法人の特集ページを掲載したり、ハローワーク求人票では健康経営優良法人認定取得のPRが可能になったりと、優秀な人材の獲得に大きくアピールすることが可能になっています。
参考:経済産業省|健康経営の推進について(令和6年3月)スライド54
日経新聞社で実施された「働き方に関するアンケート」によると、就活生・転職者の約6割が「企業が健康経営に取り組んでいることが就職先の決め手になる」と回答。また、求職者が働く職場に望むものへの回答のトップは「心身の健康を保ちながら働けること」になっています。
この様に、働く世代において健康経営が重視されています。
健康経営の導入は、求職者に対して「従業員を大切にする企業」という印象を与え、優秀な人材を引き付けやすくなるのではないでしょうか。

出典:経済産業省|健康経営の推進について(令和6年3月)スライド56
また、人材の定着率向上は「企業の離職率」を見てみるとよくわかります。
実際に、健康経営度の高い企業の離職率は、全国の一般労働者のそれと比較すると2倍以上低い傾向にあります。

出典:経済産業省|健康経営の推進について(令和6年3月)スライド57
これは従業員の健康に配慮した企業の取り組みにより、プレゼンティーイズム(心身の不調により業務効率が落ちている状態)やアブセンティーイズム(心身の不調により仕事を休業・欠勤している状態)の改善による効果とも考えられます。
これらのように、健康経営の取り組みは「人材の確保・定着率向上」というメリットがあります。
企業イメージの向上
先述のように健康経営を導入するとその取り組みが明確化されますので、社会評価や企業イメージが向上するといったメリットもあります。
経済産業省の、健康経営の取り組みによる効果アンケートでは「企業ブランドイメージの向上」と回答した企業が、従業員の健康状態の改善という回答に次いで多い結果となっています。

参考:経済産業省|健康経営の推進について(令和6年3月)スライド68
また近年、健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業向けに、国や多くの自治体、金融機関が様々な補助金やインセンティブなどの優遇措置を展開しています。
このような措置は積極的に展開され、年々増加していくと考えられます。
経済産業省の資料などでも「健康経営に対するインセンティブ措置例」として、自治体や金融機関の優遇制度の記載があるので、ぜひ下記のURLを確認してみてください!
参考:経済産業省|健康経営の推進について(令和6年3月)スライド43
参考:ACTION!健康経営|補助金・インセンティブ 国の取り組み
参考:ACTION!健康経営|補助金・インセンティブ 地域の取り組み
企業の業績アップ
健康経営のさまざまな施策によって以下のような効果が期待されます。
・従業員のコンディションが良くなり、欠勤率や休職者の低下が見込める。
・採用時に健康経営をアピールすることができ、優秀な人材の確保が期待できる。
・人材の定着率が安定し、業務効率の向上が期待できる。
健康経営の取り組みによる効果は上記以外にもさまざまありますが、企業の「社会的な信頼度」が高まり、「この会社にもっと貢献したい」と考える従業員が増えるため、一人ひとりのパフォーマンスの向上が期待できます。
また、従業員が生き生きと働けるようになることで、個人のパフォーマンスが向上し、業務の生産性アップにつながります。
実際に、経済産業省のアンケートによると「所属企業の健康投資レベルが高いと感じている人の方が、健康状態や仕事のパフォーマンスが良好であることが分かった。」との結果が出ています。
参考:経済産業省|健康経営の推進について(令和6年3月)スライド53
従業員一人ひとりのパフォーマンスが向上する結果、企業全体のパフォーマンスが上がり、最終的に企業の業績アップに大きく影響を与えるのではないでしょうか。
従業員へのメリット
健康経営に取り組むことは「働きやすい環境作りを目指す」ことにもなるので、企業だけでなく従業員にも複数のメリットが期待されます。
健康の維持増進・活力向上が期待できる
健康経営を導入することで、従業員の健康に対する意識改革へのきっかけになり得ます。
企業が積極的に健康施策を行ったり福利厚生を充実させると、従業員はそれらを活用して健康的な生活習慣を目指すことができ、100%ではないにしろ、自身でも病気の予防が可能になります。
SDH(Social Determinants of Health)という、日本語では「健康の社会的決定要因」という言葉があり、病気の背景には遺伝や個人の生活習慣など生物学的な要因だけでなく、社会的要因(教育・就業・生活環境・社会環境など)が存在するということが示唆されています。
この考え方は近年注目が高まっており、医学教育などにも取り入れられています。
参考:健康の社会的決定要因 確かな事実の探求(第二版)|WHO健康都市研究協力センター・日本健康都市学会・健康都市推進会議
従業員にとって1日の中で最も多い時間を過ごしている〝職場〟は、健康に大きく影響を及ぼすと考えられます。
健康経営による環境作りは、従業員への健康維持増進、そして活力向上が期待できるでしょう。
プライベートと仕事の両立が可能
健康経営の推進によって働きやすい環境を目指す中で〝働き方〟に関する施策に取り組むケースがあります。例えば、
・労働時間の見直し、調整
・休暇制度の見直し、導入
・フレックスタイム制の導入 など
以上のような〝働き方〟に関する施策を行うことで、プライベートの時間を確保しやすくなったり自分の生活リズムに合った方法で働けるようになったりします。
その結果、心身ともに休息ができたり、例えば趣味の時間を充実させることもできるようになると、疲労やストレス解消につながるので仕事へのモチベーションも高まるのではないでしょうか。
健康には、プライベートの時間が大きく影響します。プライベートが充実し健康的であれば、モチベーション高く仕事に還元することができ、仕事がうまくいけば、私生活も充実するといった好循環が生まれ、ワークライフバランス(=仕事と生活を調和させること)の改善にもつながります。
企業と従業員のエンゲージメントが高まる
企業が従業員の健康や働き方に配慮し積極的に施策を取っていれば、従業員は、企業が自分を大切にしてくれていると感じる場面が増えるのではないでしょうか。
その結果、仕事や会社への満足度やモチベーションが向上し、長期的に働く意欲が高まることが期待できます。
モチベーション向上などにより業績が向上すると、従業員と企業のエンゲージメント(深いつながりをもった関係性)の向上にもつながります。
また、健康経営によって企業の「社会的信頼度」が高まると、従業員一人ひとりが仕事や職場に対し、安心感や誇りを持つということが期待され、企業全体に良い影響がもたらされます。
社会への効果
経済産業省により、健康経営の実践は社会発展の寄与につながる。ということが期待されています。
ここからは健康経営の実践による具体的な社会への効果をみていきましょう。
国民の健康増進
企業が従業員の健康に配慮し心身への健康投資を行うことは、ひいては国民一人ひとりの健康増進につながります。
企業全体で職場を〝健康づくりの場〟にすることは、少子高齢化問題を抱える日本において、社会貢献となるのではないでしょうか。
持続可能な社会保障制度構築への貢献
健康経営の実践で従業員の健康を維持できれば、医療費や保険料の削減が期待できます。
これは、医療費や保険料の増大が懸念される昨今、持続可能な社会保障制度構築への貢献と直結します。
また、企業が負担する医療費・保険料の削減にもつながるのではないでしょうか。
経済成長
従業員の健康状態は企業の業績や安定性に直結するため、健康経営は企業の安定した運営と成長に不可欠です。
そして企業の業績アップや安定した運営は、結果的に経済成長へとつながります。
経済産業省でも働く人々の健康管理を経営戦略の1つと考え、企業全体で健康保持・増進のための取り組みを推進しています。
健康経営は企業の経営課題として存在していることから、「企業が健康管理を行うべき」という考えが広がり、健康経営に注目し取り組む企業が増加しているのです。
以上、今回は健康経営に関する基本的概要とメリットについてでした。
「従業員に健康でい続けてほしい」
これは経営者様が一番大切にしている想いではないでしょうか。
従業員の健康を最優先に考えることは、企業の持続可能な成長にも不可欠です。
そのために、福利厚生の一環としても、従業員の健康増進に向けた取り組みである健康経営を重視している企業が増えています。
今回の記事が、経営者様や担当者様のお役に立てれば幸いです!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後も福岡みらいテラス鍼灸をよろしくお願いします!
